BtoBマーケティングの5つの手法と成功の4つのカギ

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近年、BtoBマーケティングへの注目が高まっています。この記事ではBtoBマーケティングの特徴と必要性、事例と成功のための4つのポイントについて解説します。

目次

BtoBマーケティングとは?

BtoBとはBusiness to Businessの略で、法人顧客相手(企業間取引)の取引を示します。toの音を数字で表記してB2Bと表記されることもあります。

このBtoBと対比される用語にBtoCがあります。こちらはBusiness to Consumerの略で消費者を対象とした取引を示し、こちらも数字を使ってB2Cと表記されることがあります。

BtoBマーケティングの特徴

・検討期間が長い
まず重要なことは、BtoBではBtoCに比べて、お客さまが商品やサービスを購入するまでの検討期間が非常に長いということです。

BtoBにおける検討開始から購入までの期間の長さは、対象となる商品やサービスによって幅がありますが、1年~2年。長い場合は3年以上ということもあります。

これは、企業においては商品やサービスの購入を必要とする課題が生じてから検討し、予算を確保して購入するまでの手続きに時間がかかるためです。

・購入意思決定は組織的に行われる
そしてもう1つのポイントは、BtoBにおいては商品やサービスの購入に関する意志決定者が、複数の部門や人にまたがっているということです。このとは前述の購入までの期間を長くしている理由でもあります。

たとえばセールス・フォース・オートメーション(SFA)と呼ばれる営業支援システムの導入で考えてみましょう。

SFAの導入が必要だと考え始めたのは営業部門の責任者であったとします。そのため、まずは営業部門の立場でSFA導入に関する情報収集や費用対効果の検討をおこないます。

しかし、社内にシステムを導入するとなれば、情報システム部門やシステム開発部門、あるいは管理部門によって、既存のシステムとの連携や組織運営上の整合性などについてのメリットやリスクの評価が検証されなければなりません。

その検証の結果、導入にかかわる初期費用やランニングコストよりも、導入することによって得られる利益の方が大きいと判断されて初めて予算の確保が行われます。

さらに、購入金額が大きくなれば、より上位の意志決定者の判断を仰がねばなりません。その意志決定者は企業の規模にもよりますが、役員かもしれませんし、社長かもしれません。

このように、BtoBにおいては「1. 検討期間が長い」、「2. 購入の意思決定が組織的に行われる」という2つの特徴があるといえます。

BtoBマーケティングが注目され始めた理由

ところで日本では、BtoBマーケティングは最近まであまり発展していませんでした。

その理由の1つは、日本での企業間取引では、販売側が新規開拓よりも既存の顧客からの売上を重視していたということがあります。

また、もう1つの理由は、購入側が対面でのリレーションを重視する傾向があったことが挙げられます。

これらの理由により、マーケティングというものが営業活動の付録的な扱いだったのです。

しかし、近年ではBtoBマーケティングの重要性が注目されるようになり、営業部内にマーケティング機能を持たせたり、マーケティング部門を新設したりする企業が増えてきています。

なぜでしょうか?

これには以下のような理由があります。

まず、多くの業界において市場のグローバル化と成熟化が進んだため、製品やサービスの差別化や顧客の囲い込みが難しくなっているためです。その結果、従来の営業手法だけでは販売力を拡大できないどころか維持すらも困難になってきました。例えば飛び込み営業や数をこなすだけのテレアポといった従来の営業手法では、新規開拓の効果は出しにくくなっています。

次に、急速なITの普及により、購入者側がWebを利用して容易に商品やサービス、そして販売会社の情報を収集して比較できるようになったということです。そのため、顧客の流動性が高まり、従来の営業スタイルに依存しているだけでは、顧客が流出してしまう可能性が高まりました。
以上のようなビジネス環境の変化に適応するために、BtoBマーケティングの重要性が注目されるようになったのです。

BtoBマーケティングでリードを集める5つの手法

それではBtoBマーケティングの具体的な手法について5つ紹介しましょう。

1. テレアポでリードを集める

1つ目はテレフォンアポインター、つまりテレアポです。

これは電話をかけて自社の商品やサービスを紹介するために訪問する機会を確保する活動です。

テレアポのメリット

テレアポのメリットは、過去に接触した顧客データベースや外部から購入した顧客リストがあれば、とりあえずは誰にでもすぐに実施できるということです。

テレアポのデメリット

ところがその容易さの反面、電話をかけても担当者に取り次いでもらえなかったり、アポイントメントを取れる率が低かったりという短所があります。また、アポイントメントが取れたとしても、成約にはつながらず無駄足になることも多くあります。

2. 展示会でリードを集める

2つ目によく行われるのが展示会です。

大きなものでは幕張メッセや東京ビッグサイトなどで、特定の業界やテーマに絞って行われますね。

ここでのマーケティング活動は、会場に展示ブースを設置して商品やサービスを展示し、資料を配付したりセミナー会場で説明会をおこなったりします。その際に、見込み客の名刺を取得してリードを集めます。マーケティングにおけるリードとは、見込み客の情報を意味します。

展示会のメリット

展示会を利用するメリットは、業界やテーマを絞っていることで属性の高い集客力があるため、多くの来場者に自社製品やサービスを知ってもらいやすいことと、短期間で大量のリード情報を集めることができるということです。

展示会のデメリット

一方、デメリットは、出展コストが高く、出展料にブースの設計・設置までも含めれば、500万円以上の費用が必要になる場合があることです。また、多くの担当者が展示会の準備で手一杯となってしまい、質の高いリード情報を集める仕組み作りにまで手が回っていないという実態もあります。

3. ホワイトペーパーでリードを集める

3つ目はホワイトペーパーです。

ホワイトペーパーとは、もともとは英国政府が発行していた外交報告書のことで、その表紙が白かったことからそう呼ばれていました。

このことから政府が公開する報告書一般を示すようになり、やがて企業が発行するサービスや技術、事例などに関する資料も示すようになりました。

BtoBマーケティングでは、見込み客が自社の商品やサービスに関する情報を記載したホワイトペーパーをウェブサイト上からダウンロードできるように設置し、興味を持った人がダウンロードする際に会社名や氏名、メールアドレスなどの情報を登録する仕組みを用意しておきます。あるいはホワイトペーパー上に、さらなる情報を必要とした場合のウェブサイトへの誘導アドレスや連絡先を掲載しておきます。そしてリードを集めるのです。

たとえば弊社では、イノーバのWebサイトにコンテンツマーケティングの入門書や事例集などのeBookをダウンロードできるコーナーを設置しています。これがホワイトペーパーと言われる手法の例になりますね。

企業がホワイトペーパーを利用し始めた当初は、IT系の企業が自社のコンピューター製品を販売するために、なぜコンピューターが経営上必要なのか、あるいはなぜコンピューターを導入する企業が増えているのか、といったことを説明していました。

この手法が普及し、現在ではさまざまな業種の企業がホワイトペーパーに取り組んでいます。

ホワイトペーパーのメリット

ホワイトペーパーのメリットは、自社の製品やサービスに興味を持つ可能性がある人を見つけ出しやすいということです。あるいはまだ自社の製品・サービスを知らないが購入する動機となる課題を抱えているという人に、なぜ自社の製品・サービスが必要なのかということを説明することで、ニーズを喚起することができるということにあります。

ホワイトペーパーのデメリット

一方、デメリットは、ホワイトペーパーの作成に時間とコストがかかることです。

ホワイトペーパーはページ数が少ないものでも20ページ、多いものでは50~60ページ、場合によっては80ページを超える場合もあります。ホワイトペーパーは良質な情報を掲載するほど良質なリードを集めることができますが、そのためにはしっかりとした企画と制作時間をかける必要があるのです。

4. コンテンツマーケティング

4つ目としてコンテンツマーケティングがあります。

コンテンツマーケティングとは、企業のWebサイトでビジネスに関するブログを公開したり、情報資料のダウンロードコーナーを設置したり、あるいはメールを発行することなどを総合的におこなうマーケティングです。さまざまな形態の情報発信により見込み客の興味を惹くことで、購買意欲を引き出すのです。

コンテンツマーケティングのメリット

コンテンツマーケティングのメリットは、まずはブログを開設するなど比較的簡単に始めることができることです。

また、ブログの記事が一定量に達するたびに、それらをまとめてeBookとして発行したり、eBookの内容を今度はメールとして配信したりするなど、小さなコンテンツ配信を継続するというように業務を組み立てやすいこともメリットです。

コンテンツマーケティングのデメリット

一方、デメリットはホワイトペーパーと同様で、見込み客の興味を惹きながら関係性を育てるためには、内容がしっかりとしたコンテンツを作成する必要があるということです。そのためには社内の専門家から情報を集めたり、外部のライターに執筆を依頼したりすることも考えられます。

また、企画から配信まで、コンテンツ制作をディレクションする必要もあります。

これらの活動のためにコストがかかることがコンテンツマーケティングの課題になっています。

5. リードナーチャリング(見込み客育成)

5つ目にリードナーチャリング(見込み客育成)、あるいはマーケティングオートメーションと呼ばれる手法を紹介します。

これはITの発展と普及により登場してきた手法で、見込み客の興味や関心の内容に合わせたコンテンツを配信することです。

たとえば、従来であれば同じ内容のメールをすべての見込み客に同時に配信していました。

しかしリードナーチャリングでは、お客さまがどの資料をダウンロードしたか、どのコンテンツを閲覧したのかといった情報からリードスコアリングをおこない、見込み度合いを可視化します。そして、その見込み度合いに最適化した情報を効果的なタイミングで個別に配信することができるのです。

この手法は、これまで多くのリードを集めながらも商談や成約に結びつけられなかった大手企業で注目されています。特に展示会や説明会などで大量のリードを集めた後のフォローに有効なマーケティング手法と言えます。

リードナーチャリングのメリット

見込み顧客のニーズや検討段階に従ったアプローチを取ることができるため効率が良く、顧客の満足度を高めることができます。

リードナーチャリングの注意点

ナーチャリングのシナリオ作りには、情報設計のスキルや効果測定のスキルが必要です。また、育成するためには、顧客ニーズに応じたコンテンツ作りの業務が同時に発生します。

BtoBマーケティング成功の4つの鍵

BtoBマーケティングという新しい言葉を使ってはいますが、その活動の本質は営業活動と同じだと言えます。

つまり、お客様がなぜ商品やサービスを購入するのかということを理解したうえで、マーケティング手法によってお客様のニーズに応えていく必要があるということです。

成功のためには4つの鍵があります。それはお客さまの「ニーズ」、「タイミング」、「ロイヤリティー」、そして「キーマン」です。

1. 見込み顧客がニーズを持っていること

ニーズとは、なぜその商品やサービスがお客様に必要なのか、あるいは潜在ニーズがないだろうか、といったことを明らかにすることです。そもそもニーズがなければ、お客様は商品やサービスの購入を検討しませんから、受注に結びつけることはできません。

2. タイミングが正しいこと

次にタイミングですが、これはニーズが明らかになった後でも、予算を確保して購入できる環境が整わなければ受注に結びつかないということです。

3. ロイヤリティーが高まっていること

そして3つめのロイヤリティーは、従来は営業マンがお客様のもとに足繁く通うことで関係性を高めながら培ってきたものです。しかしBtoBマーケティングを導入することで、より効果的にロイヤリティーを高めることができます。

実際に弊社でもコンテンツマーケティング関連の書籍を2冊上梓していますが、すでにこれらをお客様が読まれていた場合は、営業担当者が訪問した時にはお客様がそれらの本を取り出して「読んで勉強してますよ」と言ってくださいます。

そのような場合は、すでにロイヤリティーが非常に高い状態で商談に入ることができますから、受注までスムーズに進むことになります。

4. キーマンをおさえること

そしてBtoBマーケティングではもう1つ押さえたいポイントがあります。

それは、すでに述べたとおり、BtoBでは購入にいたるまでの意志決定への関与者が多いため、キーマンを見極める必要があるということです。

キーマンは1人とは限りません。たとえば情報収集している人もキーマンですし、導入を推進する人、最終的な意志決定をおこなう人もキーマンです。これらのキーマンを押さえることで、誰にどのような情報を提供していくべきかを見極めなければなりません。

BtoBマーケティングにおけるよくある失敗例

よくある失敗例は次のようなものです。

・キーマンと接触できていない

たとえばセミナーを開催しても、商品やサービスの購入に権限がない若い社員たちが情報収集や勉強のために参加している場合があります。

もちろん、長期的な戦略としてみれば、そのような参加者もいつかは見込み客となりえるのですが、セミナーの運営効率という点では課題が残ります。やはり意志決定者に働きかける情報提供の手段を再検討すべきでしょう。

・業界ごとの情報収集手段を把握していない

もう1つの失敗例としては、業界ごとに特有の情報収集手段を把握しておかなかったという場合です。

IT系の業界であれば、インターネットを利用した情報収集が当然の手段として使われていますが、製造業の部品メーカーなどは、出入りの営業担当者や業界向け展示会、あるいは業界誌などから情報収集することが多いと考えられます。

このような業界で新規顧客を開拓するためには、単純にホームページで情報公開するだけでは難しいということになります。

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