BtoB企業のブランディングに関する3つの誤解

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

テクノロジーの進化と共に、「100年に1度の激変期」と言われるほど、ビジネスの業態やエコシステムが目まぐるしく変わりつつあります。

たとえば、24時間365日リアルタイムで消費が可能になり、スマホなどによる情報消費や購買の瞬間化により、消費者の購買行動や価値意識が変化しました。
(参考:Google提唱の「マイクロモーメント」―欲求に瞬時に応えるこれからのマーケティングの考え方)

さらに、チャネルパワーの増大やグローバル化など、ビジネスの現場でも様々な変化が起こっています。人々が消費に対して求めるものも、機能的価値から情緒的価値へと移っています。マーケティングの現場では、BtoCを中心にモノ(product)ではなくコト(story)づくりの重要性が周知されるようになり、競合商品と差別化するためのブランディングに力が注がれています。

しかし、BtoBにおいては、それほど浸透していないのが現状です。ブランディングとは、自社製品やサービスの存在意義を明確にし、消費者の頭の中に意味付けを与えることで、自社の価値を高めていくことですが、漠然としたイメージしかない人も多いかもしれません。今回は、特にBtoB企業にとって、なぜブランディングが必要なのかを、3つの誤解を基に解説します。

目次

1.「BtoBにブランドは関係ない」という誤解

BtoBでは、直接、エンドユーザーに商品を販売するわけではありません。そのため、BtoCで有効である「ブランド構築は必要ない」と考えている人も多いかもしれません。しかし、これは大きな間違いなのです。

有名な無料動画配信プロジェクト「TED Talks」に、世界で2800万回以上を視聴されたプレゼンテーションがあります。リーダーや企業、非営利組織に対して「人々をインスパイアする方法」を伝授してきたコンサルタント、サイモン・シネック氏による「Start with Why?」という動画です。

人は「なぜ(Why)」に共感したときに動かされる

このプレゼンテーションにおいて、シネック氏は、Apple社、キング牧師、ライト兄弟を例に、人は「何を(what)ではなく、なぜ(why)に動かされる」ものであり、このことは脳科学的にも証明されると述べています。この「なぜ(why)」とは、動機やビジョン、理念のことですが、ここに共感したときにこそ、人は動かされるというのです。

この理論をビジネスにおけるコミュニケーションに置き換えたとき、「なぜ(why)」は企業理念や今後のビジョンであり、これがブランドを形作っていきます。ビジネスパートナーや投資家を惹きつけるために、BtoB企業が自らの存在意義を発信することの必要性はここにあるのです。

2.「BtoBの顧客は年齢層が高く、デジタルネイティブではないのでウェブでの情報発信は必要ない」という誤解

製品やサービスが高額であることも多いBtoBでは、顧客の年齢層が高く、デジタルネイティブではないという誤解があります。そして、デジタルネイティブのようにデジタルコミュニケーションへの感度が高くないため、Webマーケティングはそれほど重要ではないと考えられることもあるようです。

BtoB企業の担当者の半数近くが「ミレニアム世代」!?

しかし、Googleが2014年にアメリカ合衆国でおこなった調査によると、BtoBビジネスにおける商品購入の意思決定者の半数近くがミレニアム世代(1980~2000年生まれ)であることが分かりました。ご存知の通り、この世代はデジタルネイティブであり、職場でも日常的にメールやインターネットを活用して、業務をおこなっています。このときの調査では、「スマートフォンでBtoBビジネスでの商品検討をおこなう」との回答が2012年から91%増となりましたが、これも担当者にミレニアム世代が増えてきたことが大きく関係しているでしょう。

そうは言っても、商品購入の最終決定は、企業の経営層が下しているのではないか、と思われるかもしれません。確かに、同じ調査においても、最終的な判断をしている経営層が64%、非経営層が24%という結果が出ています。しかし一方で、なんと非経営層の81%が、何らかの形で意思決定(最終決定も含む)に影響を及ぼしているという事実も明らかになったのです。

日本でも遠からず、同様の状況が訪れます。そのときのBtoBビジネスに欠かせないのは、ミレニアム世代に合わせたオンラインでの情報発信であることは言うまでもありません。

3.「商品の機能的価値を伝えるのがBtoBブランディングである」という誤解

それでは、BtoBにおいて、企業はどのような情報発信をおこなっていくべきなのでしょうか。そこには、商品やサービスの機能的価値を伝えることが、BtoBのブランドコミュニケーションであるという誤解があるようです。

専門性よりも基本的な情報が好まれる

ブランディングのために、競合商品とは異なる自社商品の特徴や価値を伝えようとすると、機能や効率性、利便性などのスペックや機能的価値を重視するべきだと考えてしまいがちです。ところが、前述のGoogleの調査によると、BtoBビジネスでの商品検討の担当者のうち71%が、基本的な情報の収集から始めると回答しています。その後、専門的な情報が記載されたサイトも閲覧しますが、基本的な情報をよく精査できたケースの方が、結果としてエンゲージメントが高くなっています。

ある米マーケティング会社の担当者は、BtoB企業は「何(what)」を詳しく説明するよりも、「なぜ(why)」を語る企業理念や背景をブランドの「ストーリー」として、顧客や潜在顧客に明確に提示し、広めることを勧めています。前述のシネック氏による「人はwhyに動かされる」に通じる考え方です。

とはいえ、それがすぐに効果につながるわけではなく、実際に購入に至るまでには、やや時間を要します。かつては対面から始まったコミュニケーションが、事前にオンラインである程度の情報を引き出すことができるようになりました。誰でも、自分がどんな相手から商品を買おうとしているのか、任せるに値する相手なのかを知りたいものです。だから、商品検討の担当者が、ブランドのストーリーに触れるのが早ければ早いほど、効果があると言われています。

機能的価値より情緒的価値を求めている

一方、Googleが2014年に発表した別の調査では、BtoBビジネスでは、機能的価値より情緒的価値を求める傾向があることが示唆されています。機能的価値は検討材料となるのですが、企業への親近感や安心感、ストーリーへの興奮や感動があった方が購入につながりやすいようです。

そして、意外なことに、ブランドに感情的なつながりを感じている割合は、BtoCよりもBtoB企業の方が高い傾向にあるということが分かりました。(図参照)なぜなら、BtoB企業は、一般的に商品検討から購入までのプロセスにおける関係者が多く、商品やサービスの導入が組織、そして企業の信頼性や業務に与える影響が大きいからです。

BtoBでは、専門的な情報や機能的価値ばかりでなく、基本的な情報や感情的なつながりを重視するコミュニケーションが求められています。パソコンやモバイル、検索、オンライン動画など、顧客と早くから触れる機会を増やしていくことが重要でしょう。

まとめ~BtoBこそブランディングを~

BtoB企業におけるブランディングは、ブランドアイデンティティー(価値提案)とブランドコネクション(価値共創)の設計が大切となります。それは、顧客や潜在顧客に対して、企業理念や今後のビジョンをきちんと伝えて、共感してくれた顧客と共に新しい価値を作っていくことです。そうした顧客とのコミュニケーションを踏まえると、BtoCよりもブランディングの重要性は高いと言えます。

そのようなブランディングのためには、顧客の共感を得るコンテンツマーケティングは有効な手段となるでしょう。顧客の心に届くメッセージのあるブランドを発信し、顧客とのエンゲージメントを高めていきましょう。

BtoBマーケティングの実践ノウハウを学ぶ