文書や口頭よりも強く響く動画マーケティング、その訴求力が誰の手にも

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日常的に目にするテレビCMは動画を使ったマーケティングで利用されるメディアの一つです。ただその放映枠を購入するには相当な資金が必要とされ、大手企業のような限られた会社がその効果を独占してきました。一方でスマートフォンの普及にともなうインターネットユーザーの拡大や外出先へも持ち出せるモビリティの向上、仲間同士の情報共有を担うSNSの登場によってインターネット動画コンテンツが注目を浴びています。簡単に言えば、テレビCMのような動画をインターネット上にアップし、インターネット上で見込み顧客にリーチし、認知や理解を促進するアプローチです。

本記事では「動画マーケティング」を「ネット上での動画を使った販促活動」と定義し、その概要について説明します。

目次

動画マーケティングとは

その前に、私たちをとりまくメディアの変化についてみてみましょう。動画マーケティングを活用する上でもメディアの動きを知ることは大切です。

インターネットと変化するメディア、なぜインターネットが重要か?

「活字離れ」「テレビ離れ」という言葉をよく耳にします。「活字離れ」は書籍や雑誌、新聞を読む人が減っているということです。テレビの場合は、まったく観ないという人は少ないですが、視聴機会やその平均時間が減っている現象を指します。

「テレビ離れ」の社会的な要因としては、主にテレビ以外の娯楽の増加があります。テレビゲームをする機会の増加や、帰宅前にカフェで一息入れる行為なども、テレビ視聴時間を減らす要因です。将来はVR(バーチャルリアリティー)ゲームやコミュニケーション型ロボットの普及なども視聴時間に影響を及ぼすかもしれません。

中でも、テレビ視聴に大きな影響を与えたのがインターネットでしょう。スマートフォンを片手にテレビを観るなど、「視聴の質」にも変化を及ぼしていることも見逃せません。

インターネットの利用者は、ブロードバンドやスマートフォンの普及で若年層と女性の利用者を増やしました。そして年代の高い世代でも、いまやインターネットが欠かせなくなりつつあります。総務省の調査結果を見ると、60歳以上での利用率が上昇しています。60代までならほぼ6割以上が利用しているので、購買が期待できる層は、インターネットマーケティングの対象として十分であり、ネットユーザーは若い人に利用者が偏っているという見方は、もはや過去になりました。

インターネット利用時間の拡大、動画が大きく伸びる①

そのため、インターネットの利用時間が増え、広告としての期待も大きくなってきました。結果として、㈱電通が毎年まとめている「日本の広告費」にあるとおり、総広告費に占めるインターネット広告の売上が毎年、拡大を続けています。


これまでインターネット広告はテキスト(文字)による表現が中心でした。今でも販促物の表現にテキストは欠かせませんが、ブロードバンドの普及、スマートフォンのネット情報の処理速度の向上で、テレビの受像機が手元にあるように、ストレス少なく動画を観ることができるようになりました。その結果、動画の投稿や共有サイトの利用者が増えました。

インターネット利用時間の拡大、動画が大きく伸びる②

総務省の調査では2016年の結果として、休日のテレビ視聴の平均時間は262.8分、一方インターネットの利用時間は163.5分です。そして動画サイト等の視聴時間は21.9分なので、テレビの10分1近くにまできています。それでもまだ平均分数で10倍以上の開きがありますが、テレビは「ながら視聴」が多いことから、テレビとインターネットの視聴の質は単純には比較できません。インターネットは視聴から販売サイトへ直接導くことができることなどを考えると、購買行動への期待も高いでしょう。

マーケティングに動画を誰でもが利用できる時代に

動画を制作すること自体は、スマートフォンでも高画質の動画が簡単に撮れること、素人でも使いやすい編集ツールなどの登場によって、ハードルが低くなっています。バズワードにもなったYouTuberですが、彼らの多くは個人です。個人でも動画制作ができると考えれば、規模が小さな会社も利用しない手はないでしょう。

できることを考えてみる

大手企業が作るテレビCMはプロの役者や大掛かりなセットを使って撮影されることもあります。制作会社や大手の広告代理店とともに制作/運営するなど、上を見れば切りがありません。マス広告並みのリソース(資金と人材)が必要です。そのため、いきなり上を目指すのではなく、できることから考えて着手してみることが大切です。

アイデア勝負

手作りの動画をアップする場合でも、制作に慣れてきたら、いかに人目をひくインパクトのあるものを制作するかを考えましょう。ただし、制作会社や広告会社には制作やプランニングの専門家が豊富にいて、事例も数多くもっています。そこと真っ向から勝負するのではなく、思いもよらないものや、自分たちでしか表現できない会社や社員の誠意、他社と差別化できる技術やサービスなどを題材に、オリジナリティを追求してみたいものです。

商品やサービスの説明にしても、カタログやパンフレットの情報を棒読みしても意味がありません。詳細はそれらを読んでもらうように短い時間で特長が伝わるような、リード役のコンテンツにしましょう。商材の説明の他、自社でセミナーを実施しているようならばその記録をアップすれば、セミナー開催のコストをネット動画マーケティングでも回収できます。ユーザーの声を直接載せるなど、テーマは無限にあると言えるでしょう。重要なことは、テレビCMの縮小版がインターネット動画ではないということです。同じ動画でも、テーマの設定やコンテンツの内容は、テレビCMとネット動画マーケティングでは、かなり異なると理解しましょう。アイデア次第で表現のかたちも無限大にあるわけです。

動画マーケティングのメリットとデメリット

可能性が無限とも言える動画マーケティングですが、そのメリットとデメリットについても考えてみましょう。

動画マーケティングのメリット

動画マーケティングから得られるメリット(効果)について簡単にまとめたものが以下です。

 1.わかりやすい:テキストを読まない層へも訴求、実演効果
        (老人のTVショップ利用による購買促進等に類似)。
 2.イメージ伝達:好ましいイメージを創出し、浸透させる能力
        (これまでのTVCMと同様)、ブランディングの推進力にも。
 3.ネット上での拡散力:おもしろい動画の友人とのシェアなどの力を借りる。
            画像+テキストの販促のみだった会社も、YouTube等の
            新しいマーケティングチャネルで拡散力を活用できる。

「1.」と「2.」についてはテレビCMに類似し、その効果に匹敵します。ブランディングというと大手のメーカーが大切に作り上げ、活用しているものです。大手企業は信頼性の他、このブランドによる集客力が強みです。インターネットの動画マーケティングを活用することで、同じ効果が期待できます。同じ企業規模、同じような商材ならばブランドイメージが優越している方が商品も売れます。商材の「機能・特徴」「価格」「販売チャネル」などの差別化要素の他に、独自の「ブランド」も武器にすることができる。

動画マーケティングのデメリット

動画制作が容易になったとはいえ、いい動画が簡単に作れるかといえばそうではありません。さらに「つまらない」「わかりづらい」「冗長」などは敬遠されてしまいます。テキストのコンテンツでは文字と図版等で、とにかく真面目に正しく伝えることが必要で、かつ十分な条件でした。しかし動画マーケティングは、正しい情報を伝えただけでは学校の授業のようにつまらないもので終わってしまうのです。

そこでプロの技を活用すれば、ある意味間違いのないものが作れるかもしれません。しかし本格的なものの製作を狙うと相当な予算になってしまいます。

また自前で作り、そのコンテンツが妥当なものだったとしても更新が必ず必要になります。テーマを変えたり、制作のコンセプトを変えたり、シリーズ化するなどで一定期間にアクセス数を落とさないような努力も必要です。内製にしても外注にしても、時間や費用が求められることも、ある程度考えておきましょう。

作って終わりにしない、効果測定も重要

制作でもマーケティング効果について、はじめから大きな成果は考えないほうがいいでしょう。更新作業を考えれば、使いやすい制作ツールをそろえ、社内に他の業務と兼任できるスタッフを育成し、経験を積んでいくことが大切です。経営側やマーケティングの責任者はあまり制作にまでは指導を入れず、少し自由に活動させて、スタッフの創意工夫に期待してみることも重要です。

そして動画マーケティングを評価するためには定量的な指標を決め、定点観測する必要があります。分析で使われることの多い指標をいくつか紹介します。

 ■再生回数
 ■クリック再生率
 ■視聴維持率
 ■滞在時間
 ■直帰率
 ■CV数、または率(動画を通して販売や成約を得た数、率)

これらの指標はサイト管理をする上で基本的なものです。動画を使ったことでどのような変化があるかを知り、動画のコンテンツを変えるなどでの違いも分析します。最終的には商品の販売(CV率)等にどの程度結びついたかですが、ただちに目に見えて結果が出ることが少ないことを考え、ある程度期間を持って試行錯誤を続ける心づもりが大切です。

気軽にはじめることが第一

最後は少しテクニカルな手法の話になってしまいました。しかし数値管理や効果測定についても少しずつ習得していくことが、動画マーケティングを成功させる上で大切です。いずれにせよアップする動画がなければはじまらないので、気軽にできることからチャレンジする精神が一番大切なのです。テストマーケティングからスタートしてみましょう。

マーケティングオートメーションの活用