部下の議事録を毎回添削していると、「なぜ同じところでつまずくのだろう」「何度伝えても要点がまとまらない」と感じることがあるかもしれません。
会議後の確認に時間がかかり、管理職や先輩社員の本来の業務まで圧迫されてしまうケースもあります。
ただし、議事録が書けない部下の多くは、単に文章力が低いわけではなく、複数の原因が重なっていることが多いです。
大切なのは、議事録の文章だけを直すのではなく、「どのプロセスで止まっているのか」を見極めること。
部下の力量や経験に合わせて指導の流れを変えると、議事録の質は少しずつ安定していきます。
この記事では、議事録が書けない部下に悩む管理職や教育担当者に向けて、よくある原因と具体的な対処法、育成の負担を減らす効率化、避けたいNG指導を解説します。
明日からの会議や添削に活かせるよう、実務で使いやすい形で整理しますので、ぜひお読みください。
部下が議事録を書けない典型的な7つの原因

議事録が書けない原因は、文章が上手いか下手かだけでは判断できません。
会議内容の理解やメモの取り方、要約の型、会議の進行、上司からのフィードバックなど、さまざまな要素が関係しています。
まずは、部下がどこでつまずいているのかを分解して確認しましょう。
① 会議内容を十分理解できていない
部下が議事録を書けない原因として多いのが、会議内容そのものを理解できていないケースです。
専門用語が多い会議や、過去の経緯を前提に話が進む会議では、新人や異動直後のメンバーが話についていけないことがあります。
特に以下のような内容を理解していなければ、記録すべき内容を判断できません。
- 誰が何を担当しているのか
- 今回の議論がどの案件につながっているのか
- なぜその論点が重要なのか
このような状態で「もっと分かりやすくまとめて」と伝えても、部下は何を直せばよいのか分からないままになります。
② メモの取り方が分からない
議事録が苦手な部下は、会議中の発言をすべて書き写そうとしがちです。
真面目な部下ほど「漏れがあってはいけない」と考え、一言一句を追いかけようとします。
しかし、すべてを書こうとすると、話を聞く余裕がなくなり、重要な結論や次のアクションを聞き逃しやすくなるでしょう。
反対に、メモが断片的すぎる場合もあります。
単語だけが並び、後から見返したときに「誰が」「何を」「いつまでに」行うのか分からない状態になります。
これは本人のやる気ではなく、会議中に優先順位をつける方法を知らないことが原因です。
③ 要約スキルが不足している
会議の内容をある程度理解できていても、要約が苦手な部下は議事録が長くなりがちです。
発言をそのまま文章化してしまい、読み手が知りたい結論までたどり着くのに時間がかかります。
要約に必要なのは、文章を短くする力だけではありません。
論点や結論、理由、決定事項、保留事項を分けて整理する力が必要です。
どの情報を残し、どの情報を削るかを判断するには、会議の目的や読み手の立場を理解している必要があります。
④ 会議の目的が理解できていない

議事録は、会議の目的によって書き方が変わります。
意思決定の会議なら決定事項と判断理由、進捗確認の会議なら各タスクの状況と次回までの対応、アイデア出しの会議なら出た意見の方向性や次に検討する案が重要です。
部下が会議の目的を理解していないと、何を記録すべきか判断できません。
結果として、雑談や補足説明ばかりが残り、肝心の決定事項が抜けてしまうことがあります。
⑤ 議事録のフォーマットが統一されていない
チーム内で議事録のフォーマットが統一されていない場合も、部下は迷いやすくなります。
たとえば、以下のような場合は「どの形でまとめればよいのか」が分かりません。
- 会議ごとに形式が違う
- 上司によって求める書き方が違う
- 過去の議事録を見ても型がそろっていない
特に新人や経験の浅い部下にとって、自由に書いてよい状態は負担になることがあります。
自由度が高いほど、自分で判断しなければならない領域が増えるためです。
⑥ 上司・チームからのフィードバックが不足している
部下が議事録を提出した後、誤字や表現だけのフィードバックをしていても、スキルは身につきません。
細かな修正も必要ですが、それだけでは部下は「なぜダメなのか」を理解できません。
- 決定事項は分かりやすい
- 判断理由が抜けている
- ToDoは担当者と期限まで書くと使いやすい
こうした形で、良い点と改善点を言葉にすることが大切です。
フィードバックは、部下に次回の仮説を持たせるために行います。
⑦ 重要ポイントと雑談の区別がついていない
部下が重要ポイントと雑談を区別できない背景には、会議の進行に問題がある場合もあります。
たとえば、以下のような場合、経験の浅い部下ほど何を残せばよいのか迷います。
- 結論が出ないまま終わる
- 論点が途中で変わる
- 話が脱線する
- 次回までの対応事項が決まっていない
この場合、部下だけに責任を求めるのではなく、会議の設計も見直す必要があるでしょう。
議題ごとに何を決める時間なのかを明確にし、最後に決定事項とToDoを確認するだけでも、議事録は書きやすくなります。
議事録が書けない部下への対処法|パターン別に紹介

部下への指導は、つまずきの原因に合わせて変えることが重要です。
理解が追いついていない部下にメモ術だけを教えても改善しにくく、要約が苦手な部下に専門用語の説明だけをしても読みやすい議事録にはなりません。
ここでは、よくある3つのパターンに分けて対処法を紹介します。
会議の内容を理解できていない部下の場合
- 専門用語についていけない
- 話の流れを理解できない
- 議論の背景が分からない
このような部下には、会議前後のサポートが効果的です。
会議中だけで理解させようとせず、事前準備と振り返りのプロセスをつくりましょう。
会議前に議題や目的を共有する
会議前に議題と目的を簡単に共有しておくと、部下は何を聞けばよいのかを意識できます。
- 今日の会議では新しい施策を決める
- 今回は前回の保留事項を確認する
- 予算の判断材料を集める
こうした一言があるだけで、メモの取り方は変わります。
可能であれば、部下に今回の会議で記録すべきことを事前に予想させるのも有効です。
最初は外れていても問題ありません。
会議前に仮説を持つことで、ただ聞く状態から、目的を持って参加する状態に変わります。
専門用語や業界知識を補足する
専門用語が多い会議では、よく出る言葉を事前にまとめておくと部下の負担が減ります。
会議で頻出する言葉や案件理解に必要な言葉、判断に関わる言葉から優先して補足しましょう。
さらに、用語の意味だけでなく、「この言葉が出たときは何を確認すべきか」まで伝えると実務に結びつきます。
納期の話なら担当者と期限、費用の話なら金額と判断者、仕様変更の話なら影響範囲を確認する、といった形です。
会議後に内容を一緒に振り返る
会議後は完成した議事録を添削する前に、部下と内容を振り返る時間を短く取ると効果的です。
- 今日の会議で決まったことは何か
- まだ決まっていないことは何か
- 次に動く人は誰か
このような事項を口頭で確認します。
この振り返りは、コーチングに近い関わり方です。
上司がすぐに答えを教えるのではなく、部下自身に整理させることで、会議の流れを追う力が育ちます。
メモを取ることに精一杯な部下の場合
- 発言をすべて書き写そうとする
- メモが整理されていない
- 会議中に聞き逃しが多い
このような部下の場合には、記録する項目を絞ることが大切です。
最初から完璧な議事録を目指させるのではなく、最低限押さえるべき情報を明確にしましょう。
まずは「決定事項」「ToDo」「保留事項」だけ書き留めるよう指導する
議事録に慣れていない部下には、まず以下の3点だけを確実に残すよう伝えます。
| 決定事項 | 会議で決まった内容 |
| ToDo | 誰が何をいつまでに行うのかを示す内容 |
| 保留事項 | まだ決まっていないことや次回確認する内容 |
この3つが押さえられていれば、会議後に関係者が次の行動を取りやすくなります。
最初から細かな補足まで書かせるより、会議後に使われる情報を優先させる方が実務的です。
効率の良いメモの取り方を指導する
メモを取るスピードが追いつかない部下には、略語や記号の使い方を教えると負担が軽くなります。
たとえば、「決」は決定事項、「課」は課題、「保」は保留、「→」は次のアクション、「?」は確認事項のように、自分なりのルールを決めておくと整理しやすいでしょう。
パソコンでメモを取る場合は、ショートカットキーや箇条書きの使い方も役立ちます。
大切なのは、きれいなメモを作ることではなく、後から議事録に変換しやすいメモを残すことです。
音声録音や文字起こしツールを併用する
情報処理が追いつかず、会議中にパニックになってしまう部下には、音声録音や文字起こしツールの併用も有効です。
後から会話を確認できる状態があると、聞き逃しへの不安が減り、会議中は論点を追うことに集中しやすくなります。
ただし、録音や文字起こしを使う場合は、社内ルールや参加者への確認が必要です。
機密情報や個人情報を扱う会議では、利用できるツールや保存方法にも注意しましょう。
ツールは部下の代わりに考えるものではなく、振り返りをしやすくするための補助として使うのが現実的です。
要点をまとめるのが苦手な部下の場合

- 会話をそのまま文章化してしまう
- 長文になりやすい
- 結論が分かりにくい
このような部下の場合は、要約の型を教えることが必要です。
文章のセンスに任せるのではなく、誰が書いても一定の品質になるよう、見本とフォーマットを用意しましょう。
良い議事録を見本として共有する
部下に「分かりやすく書いて」と伝えるより、良い議事録の見本を共有する方が効果的です。
たとえば、事前に以下のような完成議事録を見せておくと、理想の完成形をイメージしやすくなります。
- 決定事項が簡潔に書かれているもの
- ToDoに担当者と期限が入っているもの
- 議論の背景が必要な範囲で整理されているもの
また、見本を共有するときは、この議事録のどこが良いのかも一緒に説明しましょう。
読み手が迷わない構成や必要な情報の量、表現の簡潔さなどを具体的に伝えると、学習効果が高まります。
議事録のフォーマットを事前に共有する
フォーマットを事前に共有しておくと、部下は会議中から項目に沿って情報を集められます。
議事録のフォーマットには、以下の項目を入れておきましょう。
- 会議名
- 日時
- 参加者
- 会議の目的
- 議題(サマリー)
- 決定事項
- ToDo
- 保留事項
- 次回の確認事項
フォーマットが細かすぎると入力作業が増えます。
最初は必要最低限にし、チームの会議内容に合わせて調整するとよいでしょう。
部下が迷わず書ける状態をつくることが、結果的に上司の添削負担を減らします。
5W2Hでまとめるよう指導する
要点を整理する際は、5W2Hを使うと抜け漏れを防ぎやすくなります。
5W2Hとは、「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「なぜ」「どのように」「いくらで」を整理する考え方です。
すべての項目を毎回書く必要はありませんが、ToDoを書くときは「誰が」「何を」「いつまでに」が特に重要になります。
施策や方針を書くときは、「なぜその判断になったのか」「どのように進めるのか」を残すと、後から読み返したときに理解しやすくなるでしょう。
生成AIなどのツールを併用する
要約が苦手な部下には、生成AIなどのツールを補助的に使わせる方法もあります。
AIは長い文章や文字起こしの内容から、論点、結論、理由、決定事項、ToDoを構造化して返すことができます。
そのため、部下は「良い要約の型」を学びやすいのです。
一方で、AIに丸投げすると、部下が自分で考える機会が減ってしまいます。
まずは部下自身に議事録のたたき台を作らせ、その後にAIで抜け漏れや表現を確認する流れがおすすめです。
AIの出力をそのまま採用するのではなく、会議の事実と合っているかを人が確認しましょう。
属人化しがちな育成・指導の負担を軽減|議事録作成の効率化に役立つ資料をピックアップ

部下の議事録を改善するには、上司の指導が欠かせません。
ただ、毎回の添削や個別指導をすべて上司の力量に頼ると、育成が属人化し、管理職の負担も大きくなります。
そこで、議事録作成や会議後の整理を効率化したい場合は、AIツールや業務効率化の資料を参考にするのも一つの方法です。
以下のページでは、議事録作成の効率化に役立つ厳選資料を7点まとめてダウンロードできます。
その中でもおすすめの資料が以下の4つです。

※上記は資料の一例です。時期によって資料が変更される場合があります。ご了承ください。
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議事録作成におけるNG指導の例

部下の議事録を改善したいとき、指導の言い方によっては、かえって部下が萎縮してしまうことがあります。
大切なのは、部下に考えさせることと、必要な型を与えることのバランスです。
ここでは、避けたい指導例を確認しておきましょう。
「自分で考えて」の一言で終わらせる
部下の成長には、自分で考える経験が必要です。
しかし、判断基準を持っていない部下に対して「自分で考えて」とだけ伝えると、何を考えればよいのか分からず、改善につながりにくくなります。
「自分で考えて」と伝える代わりに、「まず決定事項とToDoを分けてみよう」「今回の論点は何だったと思う?」のように、考える範囲を絞ると部下は動きやすくなるでしょう。
添削だけして終わる
赤字で修正して返すだけの指導も、部下の成長にはつながりにくいです。
部下は修正後の文章を見ても、なぜその表現に変わったのか、次回どこを意識すべきなのかを理解できないことがあります。
添削する場合は、理由を添えることが重要です。
「この部分は発言の順番ではなく、結論を先にした方が読みやすい」「このToDoは担当者が抜けているため、会議後に誰が動くか分かりにくい」と伝えるだけで、部下は次に活かしやすくなります。
人格や能力を否定する言い方をする
「何回言えば分かるの」「こんな議事録では使えない」といった言い方は、部下の改善意欲を下げてしまいます。
議事録がうまく書けない原因は、本人の人格や仕事への姿勢だけではないかもしれません。
理解やメモの仕方、要約、フォーマット、会議進行など、複数の要因が関わっています。
指導では部下自身ではなく、改善すべき行動やプロセスに焦点を当てましょう。
「決定事項は書けているので、次は判断理由を1文足そう」「ToDoは良いので、期限もセットで書こう」と伝えると、部下は自分の成長ポイントを把握しやすくなります。
AIやツールを使えば解決すると考える
AI議事録ツールや文字起こしツールは便利ですが、導入すれば自動的に部下の議事録スキルが伸びるわけではありません。
文字起こしは発言を残すことには役立ちますが、何が重要かを判断する力、会議の目的に合わせて情報を整理する力は、人が学ぶ必要があります。
ツールを使う場合も、最終確認は人が行う前提にしましょう。
会議のニュアンスや社内事情、優先順位、決定までの背景は、ツールだけでは正確に判断しきれないことがあります。
AIは上司の添削負担や部下のメモ負担を減らす補助として使い、育成そのものは人が設計するのが理想です。
まとめ

議事録が書けない部下に悩んだときは、文章力だけを問題にするのではなく、どの段階でつまずいているのかを見極め、適切な指導を行うことが大切です。
また、議事録の品質は、部下だけでなく会議の進行やチームのルールにも左右されます。
論点が曖昧な会議や結論が確認されない会議では、経験の浅い部下が正確な議事録を書くのは難しくなります。
会議の最後に決定事項と次のアクションを確認するだけでも、議事録は書きやすくなるでしょう。
上司がすべてを添削し続けるのではなく、型を整え、フィードバックの基準を共有し、必要に応じてAIや文字起こしツールを活用すれば、育成と効率化を両立しやすくなります。
まずは次回の会議から「会議の目的を伝える」「記録する項目を3つに絞る」「提出後に良い点と改善点を1つずつ伝える」ことから始めてみてください。






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