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今、顧客育成が重要視されているワケ
ビッグデータというキーワードが国内のメディアを賑わせてから、まもなく10年が過ぎようとしています。総務省が発表したデータによると、2002年から2020年までの18年間でインターネット全体の情報量は約6,000倍に増えるとされており、データ量の増大ペースはまだまだ衰えを見せません。
このような状況からも、「商品の売り手」が「買い手」に対して情報を届けることは極めて難しくなっていることがわかります。だからこそ、一度接点を持った顧客をロイヤルカスタマーへと近づけていく「顧客育成」という手法が重要視されているのです。
経済市場の成長が約束されている状況下では、新規顧客の獲得が前提に考えられていましたが、いまや新規顧客との接点を生み出すことすら難しくなっています。このような前提を踏まえた上で、一度接点を持った顧客を育成するための観点について見ていきましょう。
押さえておきたい「顧客育成の基本戦略」
顧客育成の最も基本的な考え方は「顧客の状態を把握し、求められている最適な情報を、最適なタイミングで提供する」ということです。各顧客の価値観や嗜好、過去に接触した情報は多岐にわたるため、それらを適切に把握し、次のアクションに繋げていくことを意味します。
そして、顧客が好むコミュニケーションチャネル、顧客が求めるクオリティ(品質)、コスト(経済的な負担の他、消費する時間、顧客に強いる手間など)を満たしたやり取りを継続することがポイントです。
このような考え方を基本として行うマーケティング手法を「one to one マーケティング」と呼びます。この考え方も、顧客育成の成果を最大化する上で極めて重要な鍵となります。
今回は、これらの前提に基づいて代表的な顧客育成手法を5つご紹介します。
これでできる!顧客育成5つの手法
RFP分析とグルーピング
これは顧客育成施策を行うための準備といえますが、最も重要な施策の一つです。RFP分析では「最終購入日(最近、いつ購入したか?)」「購入頻度(何回、購入したか?)」「購入金額(合計でいくら購入したか?)」の3点を何段階かに分類し、顧客をグループ分けしていきます。
例えば、「1ヶ月以内に購入アクションを起こしており、計3回以上、合計10万円以上購入していればAランク」という形で顧客を分類し、後のアクション(例:イベントへの案内、特別セールへの招待)に繋げていきます。
CPM分析とセグメンテーション
CPM分析では「購買行動」「経過日数」「購買頻度」の3点を基準に、顧客を10セグメントに分類する手法です。CPM分析では、RFP分析よりもより細かな分類を行うため、顧客・販売データが十分に整備されている通販事業者などで多く実践されています。
定期接触機会の創出
メールでのクーポン配信、SNSでのセミナー案内、DMでのセール案内など、様々な施策が挙げられます。近年では、顧客のスマートフォンに配信を行う「プッシュ通知」が高い反響を得る傾向にあり、マーケティング施策の中でも成果に繋がりやすい施策として位置付けられています。
ポイントシステムの導入
ECサイトや会員システムでは主流の施策であるポイントシステム。近年では、商品代金からの割引のみならず、ユーザー間でのポイントのやり取りを促すなど「コミュニケーションを生み出すための仕掛け」としてポイントが活用されるケースも散見されます。このような仕掛けは、会員同士のコミュニケーションを促すことで顧客ロイヤリティを向上させている好事例と言えるでしょう。
コミュニティの構築
最後にご紹介するのは、「コミュニティ」という空間の構築です。近年は従来型のSNSのみならず、リアルの場を交えた「会員制サロン」なども普及しており、リアルとデジタルの境界を越えた形での顧客育成手法が実現しつつあります。
細かな顧客育成施策を交えると、5つでは分類しきれないほどの手法が存在します。これらの施策に共通するトレンドとしては、やはりあらゆる施策が「one to one マーケティング」に近づきつつあるということ、すなわち「パーソナライゼーション」が進みつある、ということが挙げられます。
パーソナライズこそが成功の鍵
今回ご紹介した顧客育成手法の成果を最大化するための鍵となるのが「パーソナライズ(パーソナライゼーション)」という考え方です。これは、個々人の興味関心や嗜好に合わせてコンテンツやサービスを最適化する手法。すなわち、前述した「one to one マーケティング」を実践する上での基本思想となります。
少し難しいように思えますが、この基本思想は私たちの身近にも存在しています。例えば、AmazonやZOZOTOWNを始めとするECサイト。「~人におすすめ」というように商品を推奨する仕組み(レコメンドエンジン)も、この「パーソナライズ」という考え方に基づいて設計されているのです。
有名老舗旅館や高級料亭といったリアルの店舗では当然のように行われている「パーソナライズ」の接客を、デジタル領域にいかに応用できるか。このポイントが顧客育成の成功の鍵となります。
顧客育成を行った先に見える未来
リードや既存顧客との関係構築を怠ることなく、顧客育成に注力し続けた先にはどのような未来が待っているのでしょうか?端的に言えば、マーケティングの模範とされるような企業(ディズニーランドやリッツ・カールトンなど)に近づいていける、というイメージです。顧客を育成し、顧客ロイヤルティを高め続けることで、顧客からの信頼の積み重ねはやがて「ブランド」という形で結実します。
一度、見込み客化・顧客化した企業やユーザーを大切に育てていく「顧客育成」という手法。まだ十分に実践できていない企業は、まずは自社の顧客をよく知ることから始めてみてはいかがでしょうか。