企業が自社サイトで情報発信するようになり、ホワイトペーパーが営業活動に役立つ手法として注目されています。企業は情報と引き換えにリードを得られ、読者も知識やノウハウを得ることができるのでWin-Winな仕組みといえるでしょう。
では潜在顧客から魅力的なホワイトペーパーだと感じてもらうには、どのように制作すればよいのでしょうか。ホワイトペーパーの種類やメリット、制作の手順を解説します。
本記事では、ホワイトペーパーに関して、
といった内容を解説します。
■ホワイトペーパーとは?
ホワイトペーパーとは製品やサービスを提供する企業が、リードを獲得するために行う施策の一つとして注目されている配布資料のことです。元の英語の意味は、公的機関から発行されるさまざまなデータを総括した「報告書」のことで「国民生活白書」「警察白書」といった用語で耳なじみのある方も多いでしょう。
近年はマーケティング用語としても使われ、自社製品の効果・効用を市場動向や調査結果と共に記載し、より説得力のある資料を意味しています。営業ツールの一環としては「提案書」や「仕様書」に類似していますが、これらは従来の資料と視点が異なるという特徴があります。
「提案書・仕様書」では製品の優れた点、開発秘話、契約料などが「提供する側の視点」でつづられていることが多いでしょう。一方、ホワイトペーパーは「利用する側の視点」に立ち、想定される課題とその解決法を中心として構成されています。
■ホワイトペーパーの種類
ホワイトペーパーには、紹介したい製品の種別や対象となるターゲットに想定される課題の違いから、いくつか種類があります。ここでは代表的な6つのタイプを解説します。
自社商品・サービス
「ホワイトペーパーは営業資料とは異なる」という観点から、自社製品やサービスに関する情報は不要ではないかと考える方もいるかもしれません。しかしクローズドの情報としておくことで「ホームページに掲載されている情報よりも、さらに踏み込んだことが知りたい」「比較検討するために、紙媒体で手元に置いておきたい」といった需要が想定されます。
自社の営業担当が、製品について正しく理解する資料としても活用できるので「基準」となるホワイトペーパーを用意しておくことをおすすめします。
企業ノウハウ
企業ノウハウや業界ノウハウのホワイトペーパーでは、その分野に深い知見があること、業界内事情にも精通した専門家であることをアピールできます。製品やサービスの検討段階にない人々にも興味を持ってもらえる情報なので、ブランディングに有効でしょう。
まとめやすいテーマとしては「ビギナー向けアドバイス」「製品選択の際のポイント」「性能・料金比較」などがあります。企業ノウハウをペーパー化するには、複数部門の情報を集約する、客観的な視点を持つ、「読み物」としても一定のレベルをクリアするなどが求められるので、広報や外部の力を借りることも検討しましょう。
調査結果・レポート
調査結果やレポートのホワイトペーパーは、消費者アンケートや利用者インタビューなどの基礎データが必要で、時間や工数がかかってしまうのが難点です。しかし、しっかりとした基礎データを持ち、わかりやすいグラフ化、数年ごとの追跡結果、トレンド性などの特徴を持ったホワイトペーパーはメディアから注目されたり、関連業界で引用されたりすることが期待できるので、費用対効果は高いといえるでしょう。
導入事例
すでに製品やサービスを利用している企業や個人にインタビューを行い、導入のきっかけや効果をまとめたものが導入事例です。利用を検討している人からみれば「利用することで、どのような変化が起きるだろう」という最も知りたい情報が得られる資料なので、ページビュー数やダウンロード数のアップが期待できます。
「ホームページ上には簡易版を掲載し、詳細はダウンロード対応とする」「ソリューションまたは企業規模で検索できる」「利用者の許可を得て、実名を公表する」などの工夫をして、信頼性の高いデータベースを構築しましょう。
用語集
用語集は、特定の業界や現場で使われている専門用語を解説したホワイトペーパーです。閲覧希望者は「専門用語がわからないから知りたい」ので、誰が読んでもわかるような平易な言葉で解説することが大切です。社内で作成する場合には、ベテランだけで担当するのではなく、あえて経験の浅い新卒者にチェックしてもらったり、他部署へ回覧したりするとよいでしょう。
テンプレート・チェックリスト
課題に直面している人に、そのまま利用してもらえるようなテンプレートやチェックリストを提供すると、自社サービスのターゲットとなりうる人物の情報をピンポイントで入手できます。テンプレートやチェックリストの項目が適正であれば、製品やサービスへの信頼性が高まり、自社のファン作りにも役立つでしょう。
また、テンプレートを利用していくなかで「カスタマイズ化したい」「業務量が多いので自動化したい」などの要望が生まれた際には、真っ先に相談される対象となれるので、競合他社から一歩リードできます。
■ホワイトペーパーを作成する4つのメリット
企業サイトでのホワイトペーパーが注目されているのは、そこにWebマーケティングの壁を突破したり、営業活動の助けとなったりするメリットがあるからです。BtoB企業がホワイトペーパーを作成する4つのメリットを解説します。
リードを獲得できる
企業サイトで公開されているホワイトペーパーは「無料」で提供する代わりに、ダウンロード時にサイトへの登録を促し、氏名や所属、メールアドレスの記入を求めるものがほとんどです。ダウンロードした人は、そのテーマに強い興味を持っていることが明らかなので、ホワイトペーパーは確度の高いリードを獲得する手法として効果があります。
リードを育成できる
ホワイトペーパーの内容が確かなものであれば、リードから信頼を得られるようになり、「これを知りたいときにはこのサイト」と認識してもらえるようになります。アドレスを得たからといって即商談を始めるのではなく、相手がほしい情報、課題に寄り添った切り口で継続的に接触し、質の高いリードへと育成していきましょう。製品の技術力やサービス導入のメリットといった情報を適切なタイミングで提供することで、購買意欲を刺激する効果も狙えます。
顧客満足度を高められる
ホワイトペーパーは新規顧客獲得・リード育成のためだけでなく、既存顧客の満足度を高めるのにも役立ちます。顧客満足度アップには、既存サービスのトラブルシューティング、アップデート情報、他企業での活用事例などのホワイトペーパーが適しているでしょう。
営業活動を効率化できる
ホワイトペーパーがあれば訪問営業や電話営業など、初期段階の情報提供をペーパーに置き換えられるので、営業活動の効率化がかないます。また商談の際にも、ホワイトペーパーを活用すれば「提案書」や「関連資料」を用意する手間が省けるでしょう。ホワイトペーパーはPDFなどでデータ化されているので、オンライン商談にも対応可能です。
■ホワイトペーパーの作り方
「自社のWebサイトを充実させるためにホワイトペーパーを作ってみよう」と考えても、社内資料をそのまま掲載したり、他社と差別化のできてない情報を羅列したりしては逆効果です。ホワイトペーパーは扱う製品やサービス、業界事情などによって需要の高い情報が異なります。
いきなり「読み物」を書き出すのではなく、作る目的を明確にした上で、手順に沿って作成を進めましょう。ホワイトペーパーを作成するための5つのステップを解説します。
作る目的を明確にする
最初のステップは「作る目的を明確にする」ことです。大きな目的としては「営業活動のボトルネックを解消したい」となるでしょう。さらに分析を進め、目的にあったホワイトペーパーを作成することが大切です。以下に目的とホワイトペーパーの種別の対応関係を紹介します。
・サービスの認知度を高めたい=多くの読者・メディアの注目を集めやすい「レポート」
・リードへアプローチしてからミスマッチに気づくことが多い=製品情報に「課題解決」を加え、自社の製品で解決できること、対応範囲を共有する
・商談後の決め手にかけ、成約率の低さが課題=「事例紹介」で導入効果を伝える など
自社サービスが解決できるニーズや課題を洗い出す
業界知識やトレンド傾向など読み物として面白くても、自社製品とリンクする部分がなければ、成約や購買につながる有意義なホワイトペーパーとはいえません。自社サービスがどのような課題を解決できるのか、そこにニーズはあるのか、改めて洗い出してみましょう。
サービスの特徴や技術力をピックアップするのではなく「利用者が抱える課題」「利用者のニーズ」の視点からチェックしていくと、読み手に受け入れられやすい資料となります。
ターゲットを明確にする
「作成目的」と「課題解決」があれば、ホワイトペーパーの作成は進められますが、より「刺さる」表現をするためにターゲットを明確にしておきましょう。ターゲット像を明確にする際には「ペルソナ」の設定が有効です。例えば「経理部門の30代男性」がターゲットだとして、その男性の趣味は何か、家族構成、好きなテレビ番組、休日の過ごし方までを想定するのが「ペルソナ」です。
ペルソナを設定し作成メンバーで共有しておくと、ホワイトペーパーの方向性や表現(文言・デザインなど)をより詳細に練ることができます。
全体のストーリーを構成する
ホワイトペーパーのストーリー構成とは、読み手にどのような情報を提供するか、作成目的を達成するにはどのように展開したらよいのかを考えるステップです。ストーリーを構成したら、読者目線で全体の流れをチェックしていきましょう。ストーリーはホワイトペーパーのクオリティに直結するポイントなので、このステップには時間をかけることをおすすめします。
ボリュームを決めて制作
ストーリーが固まったら、ページごとに肉付けしていきましょう。紙媒体の場合は紙面や予算に限りがあり、8ページもの・16ページものと印刷の都合に縛られてしまいますが、Web媒体にそのような制約はありません。
紙面の見やすさや、情報量とビジュアルなどのバランスを考えてボリュームを決めましょう。せっかくダウンロードしても2ページきりではがっかりさせてしまい、情報量が多いと最後まで目を通してもらえないかもしれません。軽いもので4ページから、しっかりと情報を伝えるものなら20ページ程度がよいでしょう。
■ホワイトペーパーの注意点3つ
手順に沿ってホワイトペーパーを作成しても「ダウンロード数が伸びない」「レスポンスが増えない」など、結果が思わしくない場合、読み手のニーズからずれている可能性があります。ホワイトペーパー作成時に注意したい項目を3つ紹介するので、これから作成する方や既存のホワイトペーパーを見直したい方は、項目ごとにチェックしていきましょう。
売り込みしすぎない
ホワイトペーパーの目的は情報開示やノウハウの共有、利用者の課題解決のヒントなどです。何かしらの情報が得られると思ってダウンロードした結果「何だ、広告か」「結局売り込みなのね」と感じられてしまっては、マイナスの印象を拭えません。ホワイトペーパーは、営業要素が強くなりすぎないように細心の注意を払って作成しましょう。
専門用語は使わない
業界知識を伝えたいあまり、ホワイトペーパーが専門用語だらけになってしまっては、幅広い対象に読んでもらえません。ふと興味を持って手にした人にも伝わるように専門用語は極力使わずに作成しましょう。やむを得ず使用する場合には、注釈を入れたり図解したりするなどして、わかりやすい資料となるよう心がけてください。
最新の情報にアップデートする
製品の製造ナンバーやシステムのバージョン、調査年度など、ホワイトペーパーにはさまざまな数字が登場します。これらが古いまま放置されていると「情報管理ができていない」「他社と比較をしたかったのに参考にならない」など、企業の体質や利用者へのホスピタリティまでが疑われてしまいます。
またWebサイト上にあれば簡単に修正できるデータも、ダウンロード後に手を入れることはできません。定期的に情報を更新して、常に最新のデータを提供できるよう注意しましょう。またすでにダウンロードしている人向けに、更新情報を知らせることも大切です。
■まとめ
商談向けの提案書や製品のパンフレットなどと違い、潜在顧客が欲しがる情報と利用者目線で作られたホワイトペーパーは、プル型営業に役立ちます。サイト訪問者が実際に問い合わせたり見積もりを請求したりするには、心理的なハードルが高いものです。ホワイトペーパーのダウンロードは、サイト閲覧と問い合わせとの中間に位置するアクションポイントとして機能するでしょう。
目的やターゲットを明確にし、営業活動の効率化に役立つようなホワイトペーパーを作成しましょう。
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